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審美眼のない技術者が、お客様を綺麗にできる訳がありません。流行や文化を掴む事は大事ですが、テレビや雑誌を追い掛けているだけでは、本質を見失ってしまいます。

「多くを見聞し本物を探そう」 ここは感受性の旅を綴ったコラムです。     ( 構成・文  永野 洋 )


■ ブレードランナー

Introduction..............植民惑星から4体の人造人間=レプリカントが脱走した。彼らの捕獲を依頼された“ブレードランナー”デッカードは、地球に潜入したレプリカントたちを追うが……。近未来を舞台にしたSFサスペンスで、その卓越した近未来描写により、多くのファンを持つカルト作品。原作はP・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』................................

今更紹介するまでもない、名作 「ブレードランナー」。
昨年公開25周年を記念し、ファイナル・カット版DVDが発売されました。1982年の公開時には興業的には惨敗、打ち切りと相成りました。その後時間をかけて再評価される事となります。因に同年公開のSF映画と言えば、「ET」。私自身、「ET」は劇場鑑賞していますが、本作を観たのはその約5年以上後だと記憶しています。

「未来の街は、整頓された美しくも奇抜な世界」
誰もがそう思い描いていた時代に、リドリー・スコット監督がスクリーンに映し出した虚構の街は、絶えず酸性雨が降り注ぐ湿った大都会でした。
荒廃し続ける近未来。高度な技術は様々な文化を飲み込み、東洋的・カオス的未来都市を作り上げています。
しかしそれは、多くの人間に圧倒的リアリティを感じさせました。勿論私もその一人です。この映画がもたらしたイメージの革新は、今現在も様々な文化に息づいています。

そして、原作とはかなり違いますが、脚色された本作の脚本も素晴らしい。
レプリカントという人造人間に過酷な作業を強いる未来。当然彼らには人としての権利など無く、苦しみの挙句脱走する彼等を狩る捜査官(ブレードランナー)。主人公デッカードは、血なまぐさい捜査の中、自制しなければならないと分かっていながら、レプリカント・レイチェルに惹かれて行く...。
混沌とした社会の中で、人類の罪と、命の意味、そして愛を描いた素晴らしい作品です。音楽や美術も寒気がする程の出来。ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアーも熱のある演技を見せています。才能の結集とは正にこのような映画の事です。

レプリカントが脱走した2020年まで後12年。果たして私達は、技術や命に責任を持てる未来を作る事ができるでしょうか?

ブレードランナー  

1982年・米 上映時間 118分

■ 監督 リドリー・スコット 製作 マイケル・デイーリー  原作 フィリップ・K・ディック 音楽 ヴァンゲリス 美術 シド・ミード  特殊撮影効果 ダグラス・トランブル、リチャード・ユーリッチ、デビッド・ドライヤー

■ 出演 ハリソン・フォード  ルトガー・ハウアー  ショーン・ヤング  エドワード・ジェームズ・オルモス  M・エメット・ウォルシュ  ダリル・ハンナ

1983年度ヒューゴー賞 最優秀映像作品賞受賞
1983年度BAFTAアウォーズ撮影賞・衣装デザイン賞・美術賞受賞、編集賞・メイク賞・作曲賞・音響賞・特殊視覚効果賞ノミネート
1983年度ロンドン映画批評家協会賞 特別業績賞受賞(L・G・ポール、D・トランブル、S・ミード)
1983年度ロサンゼルス映画批評家協会賞 最優秀撮影賞受賞
1983年度アカデミー賞 視覚効果賞・美術賞ノミネート
1982年度イギリス・撮影者協会賞ノミネート
1983年度・1993年度ファンタスポルト映画祭 ファンタジー作品賞ノミネート
1983年度ゴールデングローブ賞 作曲賞ノミネート
1983年度第14回星雲賞 映画演劇部門賞受賞。


■ 12タンゴ ブエノスアイレスへの往復切符

Introduction..............71才のタンゴ・ダンサーのロベルトが年金を打ち切られ、貧しい生活を強いられる中、仕事のない20才のマルセラはダンス・インストラクターとして生活の糧を得るためにフランスへと旅立つ。彼らの人生はタンゴの表現の本質である絶望と危機を象徴し、タンゴの歴史を映し出す。日本で初めて歌ったタンゴ歌手のマリア・デ・ラ・フエンテと、ローリング・ストーン誌に「現在最高の歌手」と称されたリディア・ボルダ、そして撮影直後に亡くなった伝説のバンドネオン奏者ホセ・リベルテーラと若手のパブロ・マイネッティなど様々な世代のアルゼンチンのスター・ミュージシャンたちがルイス・ボルダの指揮のもと壮麗なタンゴを演奏する。................................

今年は「ビンセント・アミーゴ」というギタリストの影響で、音楽に関してはフラメンコ漬けの一年でした。そこへ、このドキュメンタリー。仕事の合間の「ながら見」にも関わらず、完全にスペインから連れて行かれました、アルゼンチンはブエノスアイレス。

この映画は、現代のブエノスアイレスを力強く生きる人々の姿を映し出しています。築200年というタンゴ・ホール<ラ・カテドラル>では今も舞踏会が行われ、自国の切迫した事情と絶望をタンゴに乗せて奏でるのです。とにかくタンゴのシーンは美しい。自堕落な自分は背筋に氷を入れられた気分でした。
まるで崖淵ギリギリで踊っているかのような緊迫感と哭く様に楽器を奏でる演奏家に痺れます。そして70歳を越えた老ダンサーの不安と希望を込め踊るその姿に、タンゴの旋律は時に愛しく、時に残酷に響きます。

在り来たりのアクションやファンタジーに飽きたら....ぜひお薦めします。映画を見終えた後、ホセ・リベルテーラの魂のバンドネオンに涙する事でしょう。

12タンゴ ブエノスアイレスへの往復切符

アルゼンチンのトップ・タンゴダンサーと伝説のバンドネオニストが共演!哀愁の歴史に 翻弄されながらも、現代のブエノスアイレスを力強く生きる人々の姿を捉えた感動のタ ンゴ・ドキュメンタリー

■ 監督 アルネ・ビルケンシュトック

■ 出演 ロベルト・トネット、マルセラ・マイオーラ、ジゼラ&ガスパル、アルフレッド・カルリーノ、他

■ 音楽
ルイス・ボルダ、マリア・デ・ラ・フエンテ、リディア・ボルダ、ホセ・リベルテー ラ、ホルヘ・ソブラール、ラス・ムニェカス、パブロ・マイネッティ、フリオ・パネ、 ウンベルト・リドルフィ、エリサベート・リドルフィ、ディエゴ・スキッシ、オスカル・ジウンタ、フアン・クルース・デ・ウルキーサ、パブロ・ラ・ポルタ、他

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